「風工学研究センターの発足」・・・・・東京工芸大学工学部建築学科 教授 田村幸雄 

 本学の風工学研究プロジェクトが、文部科学省のアカデミックフロンティア推進事業の一つに認められ、昨年3月にはRC3階建ての「風工学研究センター」ができ、新しい大型境界層風洞(断面幅2.2m、高さ1.8m)が完成しました。昨秋、これを記念して、海外12名、国内5名の著名な研究者をお呼びし、国際セミナー“Wind Hazard Mitigation in Urban Areas”を開催しました。国内から大熊武司(神大・日本風工学会会長)、松本勝(京大)、神田順(東大)、河井宏允(京大)、崔恒(東大)の諸先生方のご講演のほか、和田章先生(東工大)はじめ、サーツの米田雅子様、伊藤誠三様、太田統士様にもご出席いただき、大変有り難く思いました。その週は、講演者全員が京都へ廻って国際風工学会・アジア太平洋地域会議(APCWE V)に参加し、私は、さらにオーストラリアのDr. Holmesと「風荷重基準に対する国際ワークショップ」の共同議長を務め、「ISO4354 Wind Actions改訂に関する第1回WG」へ参加するなど、実に忙しい1週間でした。
 うちの研究室では耐風設計を専門としていますが、居住性、制振構造、免震、建築物の減衰など、なるべく幅広く関連分野にチャレンジしております。ちなみに、「減衰」に関しましては、2000年10月に、精度良い予測式と設計用推奨値を提案すべく、日本建築学会から『建築物の減衰』が出版されました。信頼性の高い構造設計を実現するため、従来の鉄骨2%、RC3%といういい加減な値はやめ、推奨値を是非活用していただきたいと思います。
 今取り組んでいるテーマをいくつかご紹介します。設計風速関連では、台風地域での風向依存性を取り入れるため、気象データと台風シミュレーションのハイブリッド利用の研究をやっており、近々成果が改訂荷重指針に反映される予定です。また、500m程度の上空まで風速を計測できるドップラソーダを用いて市街地上空の風観測を行っており、風速の空間分布の合理的な評価と、より経済的な耐風設計の実現へ向けて努力しています。風圧力関連では、風洞実験を利用して、最大風力発生時の風圧パターンや、風力の組み合わせの研究を行っております。応答計測関連では、カーナビ等でお馴染みのGPSを利用した風応答計測を行っており、高さ30m程度以上の建築物で、春一番くらいの強風であれば、動的・静的成分も含めて、十分に変位応答観測が可能であることが明らかとなっております。さらに、地震も含め、GPS利用の未来型都市防災システム構築へと研究を進めております。
 この原稿は、シカゴから車で3時間程度のSouth Bendという町で書いております。Notre Dame大学に、Visiting Melchor Professorという名の客員教授として滞在し、2月と3月、2ヶ月間の予定で耐風設計の授業をしています。大学院生5人の他に研究助手など5人が聴講生として加わり、熱心に聴いてくれています。キャンパス内の客員教授用アパートにもLANが来ておりますので、工芸大の研究室とNetmeetingを使ったテレビ会議が常時接続状態になっており、卒論発表会等にも参加するはめになりました。しばしのんびり...の思惑ははずれ、何とかせねばと焦っています。
風工学国際セミナー風景