１．まえがき
今から十数年前、橋本内閣時代に、構造改革を目指し、民間活力の活性化を図る方策として、規制緩和への取り組みを行う事が計画された。
これを受けて、（社）住宅生産団体連合会（略称・住団連）に対して、住宅に関する提案をまとめる様、建設省（現国土交通省）から、指示が有った。
当時の「住団連」には７の委員会が活動していて、住宅政策等への提言のため議論、調査、検討、提案要望書の作成や住宅業界の技術的な向上を図るための基準作り、および、住宅需要者向け冊子の作成や住宅月間の展示運営による、啓蒙活動等多彩な活動を行なっていた。
その中に、「建築規制合理化委員会」があり、住宅建築および設備における、法律、工法、材料、規格、認定等に対して、住宅業界として改善を求めたい事項について調査および検討を行なっていて、私はＷＧの座長として実務面を担当していた。
その第一段階として、低層住宅における建築基準法の地域毎の解釈や指導がどの様になっているかについて、会員企業を通じて全国的な規模の調査を行っていた。
それに、この規制緩和要望を当委員会が取りまとめる事となり、会員団体および会員企業に緊急アンケートを行い、寄せられた提案の確認、補完を行なった上で、要望項目・現状・提案理由等を作成し、建設省に提出した。
２．規制緩和の仕組み
１）規制緩和ローリングの仕組み
２）規制緩和の課題
1.三つの不信 消費者は賢くない／商人（企業）は悪 どい／地方は無能だ
2.規制緩和進展の跛行性
・誰を助けるか 弱者と全体
・最後に残った既得権 民々規制の排除
・保護主義 自己責任、自己規律の原則
貫徹
3.個別・具体的な規制緩和要求
・ 表面的な理屈を上回る理論と事実が必要
３．規制緩和提案の概要
要望項目は多岐に亘っていたが、建設省の関係部局が、要望項目毎に関係省庁と調整をしてくれ、要望が受け入れられる項目について、提案する事になった。
１）項目の概要（省庁は当時の名称）
1.住宅生産工場内でのガス配管工事（通産省）
2. 〃 電気配線工事（ 〃 ）
3.給水装置に関するもの （厚生省）
4.水道指定工事店に関するもの （ 〃 ）
5.建築基準法に関するもの （建設省）
6.JASに関するもの （建設省・農水省）
４．具体的な給水装置の使用規制の合理化の経過
前記、３の提案の内、今回は��および�い侶于瓩函�結果について記述する。
設備関係の提案は、参加団体の一つである（社）リビングアメニティ協会からの提案を期待したが、適切なものが無く、それ迄に私が感じていた事や、話を聞いていた事で、問題意識を持っていた事項を提出する事とした。
給水装置（水道の配管材や水洗器具）の型式承認は（社）日本水道協会（略称・日水協）が唯一の認定機関でありながら、評価の基準が示されていないため、新しい構造や材質を採用する事が難しい状況であった。
加えて、この型式承認を取れば全国の水道事業者が、使用を許可するかといえば、必ずしもそうではなかった。
それは地域による水質の違いが有り、承認製品が水質に適合するかの判断が事業者にまかされていたからだ。
水道事業者は「低層住宅」（受水槽を持たない住宅）の蛇口から出る水に、また「３階建て戸建住宅、マンション、ホテル、事務所等」は受水槽に入る水の安全性に責任を負わされているが、承認基準がオープン化していないため、ある程度もっともな事でもあった。
ガスや電気は明治時代に、欧米から仕組と法律が一体となった状態で、普及されたが、水は近代化する以前から人類の英知により、地域毎（都道府県市区町村営、その他に水道組合）それぞれのやり方で、運用されていて来て地方性が尊重されていた。
この様な状況下であったが、住宅業界として下記の項目について規制緩和を要望をした。
1.給水装置の型式承認手続きの簡素化。
2.型式承認された給水装置の製品検査の簡素化。
3.新材料を使用した製品の認可手続きの緩和。
4.型式承認合格品の地方自治体での二重審査の改善。
5.複数のエネルギー（水道、電気、ガス等）を利用している製品の一括審査と認定。
6.水道指定工事店の対応地域の拡大。
7.３階建住宅への直結給水を可能とする。
その結果、平成８年３月「給水装置の使用規制に係る緩和」が閣議決定し、緩和策の実施のため、厚生省（当時）に平成８年７月「生活環境審議会・水道部会・給水装置専門委員会」が設立され、私が住宅業界の代表委員として参加し、提案内容を反映する事が出来た。
委員には、複数の水道事業体、評価機関、工事団体の住宅業界提案を推進するのに反対する側の委員も居たが、種々検討の結果、以下の様に規制緩和が図られた。
１．新たな制度の基本的な考え方
１）構造・材質基準の明確化、性能基準
（１）水道法施行令第４条の給水装置の構造及び材質の基準の意義及び基準項目
（２）明確化、性能基準化の考え方
（３）利便性、災害復旧等の観点からの性能確保
２）基準適合性の証明方法
（１）自己認証
（２）第三者認証
（３）新たな制度の仕組みと基準適合情報の普及
２．具体的な内容
１）給水装置の構造・材質基準
（１）給水管及び給水用具の性能基準
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（２）給水装置システムの基準
（３）技術進歩等への対応
２）第三者認証制度
（１）第三者認証機関の要件及び業務実施方法
（２）認証方法
（３）検査方法
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（４）認証マークの表示 （以下省略）
以上を要約すると
1.国の性能基準が定められ、明確化した。
2.評価が「日水協」以外の機関でも可能となった
他、自己認証が第一義的な取り扱いとなった。
3.給湯器等複数のエネルギーに関する機器の評価を一機関で
評価出来る様になった（省庁をまたがっている）
4.新しい材料、構造の給水装置の開発がし易くなった。
5.製品検査が「日水協」職員の常駐システムから、
ＩＳＯ等品質管理の認証取得企業は自社検査が可能となった。
6.基準を満たしている製品は地域ごとの再評価が不要。
水道指定工事店の問題提案について触れたい。
各水道事業体は、その地域の水道水を安全に供給出来る様、工事技術者の試験と資格者の認定を行い、その地域に事業所を有する者を水道業者として指定していた。
水道事業体は都道府県単位で広域に供給しているケースも有るが、ほとんどは市町村単位で、東京都も都下はこのケースに該当する。
住宅の工事をする側から見ると、例を埼玉県とすると、県下に５０以上の水道事業体が在り、旧浦和市に事業所が在る水道業者と取引がある住宅企業が旧大宮市に住宅を建てる場合に、浦和の水道指定工事店に工事を発注すると、その水道業者は大宮市の水道事業体の指定工事店に申請手続きをしてもらい、名義料を払うか、工事を委託するかになり、施主に余分な出費が必用になっていた。
その他、川崎市の指定業者の中には申請業者の言い値で材料購入が条件になっているとの新聞報道も有った。
委員会での検討の結果、水道法の改正案が平成8年通常国会で成立し、水道指定工事制度が見直され、全国統一的な「給水装置工事主任技術者」資格制度となった。
また、水道事業者ごとのまちまちだった、指定店の指定用件の統一化が図られるようになり、水道事業者の給水地域に事業所を持たない工事業者も、全国共通の要件が整えば指定工事業者になれる事となった。
それから、委員会の中で追加発言した項目として、３階建て住宅への直結給水の件も採用され、水圧試験の結果ほとんど問題が無く、４階まで行なわれている地域もある。
これにより、3階建ての住宅が建て易くなった、それは敷地の中に受水層を設けるスペースが確保しにくく、かつ工事費が抑えられるメリットがある。
業界団体の提案が、これほど反映された事は劇的な事で、担当をされた旧建設省および厚生省関係者のご尽力に私は今も感謝の気持ちを強く持っています。
