次世代へ 「建築確認・検査の民間開放」 ・・・・・・ 奈良幹雄

 建築基準法が制定されてから半世紀になりますが、平成10年6月の大改正は画期的といえると思います。
 基準法ほど建築設計者をはじめとして関係者から評判のよくない法律はないといわれています。これはこの法律の難解なことに加え、改正前まで特定行政庁の建築主事が行っていた法の解釈と運用について、法解釈の不統一、確認期間の長さ、窓口での対応など種々の問題点が指摘されてきました。
 しかし基準法を単独で評価することには問題があると思います。基準法は建築、市街地を生み出す最も重要なサブシステムといえると思いますが、現状をマクロに見れば土地利用計画などを定める都市計画というシステムがうまく動いているかといえばそこには大きな問題があるのではないでしょうか。
 建基法の評価は都市化を背景とした経済社会の発展から建築士の問題まで総合的に見て判断することで軽々しくいうことではないと思います。
 確認検査業務は何よりも法律の適正な解釈と厳正な適用そして運用が最も要求される業務です。
 指定確認検査機関等の業務状況は平成13年10月末現在70機関が指定されています。そのうち60パーセントが財団系、40パーセントが株式会社であり、異業種としてNPO法人や学校法人もあります。民間が取り扱った件数は12年度、全国の確認件数90万件のうち約10パーセントにあたる9万件で今後も民間が扱う件数は増加するものと思われます。しかし民間機関の参加する新制度が公共団体の建築規制機能を否定するものではありませんが、将来の執行体制に大きな影響を与えることは容易に想像できます。
 確認検査業務は建基法に基づいて確認申請書の審査、現場の検査を行うものですが、審査の対象法令である「建築基準関係規定」の解釈、建築物の安全性等を担保する現場検査等に要求される高度な専門知識と経験などの能力が活用できます。また随時行われる関係法令の改正、告示の公布に加え新しい知識の習得など勉強することはいくらでもあります。さらにこの業務は確認検査員の資格さえ取得すれば建築技術などの経験が生かせる価値ある仕事になるのではないでしょうか。
 今後確認検査員やその他の職員となってどこかの機関に所属することや、新たな公正中立な第3者機関の指定を受け新しい分野に挑戦して「夢の実現」を目標とし、そこで厳正な法律の解釈と運用、申請書の短期間処理そして公正適確な業務を確保することにより、特定行政庁、建築主事の信頼を得ることができれば素晴らしいと思います。
 なお、現在NPOで指定確認検査機関の指定を受けているのは京都府にあり、京都府の一部市町を業務区域として、500平方メートル以内の建築物を対象としています。
 法改正にともなう民間建築主事制度導入により「建築主事の資格検定」が「建築基準適合判定資格者検定」と変更になり民間からの受検ができるようになりました。
 受検資格は「1級建築士」であることと「確認検査等の業務に関して2年以上の実務の経験を有する者」とされています。後者については基準法施行令、建設省告示もありますが、詳細は都道府県建築主務課に相談すると良いと思います。
 先の阪神・淡路大震災を契機に確認検査制度の重要性が改めて注目されてきました。
 法の実効性の確保のため民間機関の責任は大きなものとなってきています。
 諸外国における建築検査業務の民間活用の例をみると、英国では1984年大臣の認定を受けた民間の検査機関が導入され、オーストラリアでは1991年従来行政庁のみで行われていた建築検査制度に民間承認制度が導入されました。米国においても特定の専門的な工程に関しては市の認可を受けた認定民間技術者が検査して結果を市に報告しています。我が国も法改正をもとに建築規制の業務は民間機関が大きな役割を持つようになると思います。
 新しい時代を迎え建築確認業務は建築規制という国民の義務の伴う仕事である以上きびしい反応はありますが、厳正な業務の行える民間機関が増えることを期待します。