観・想・考

好奇心と巡り合わせ・・・・伊東俊彦

 昨年の9月ごろであったか、PSATSの事務所に向かう途中、赤門の前に通りかかったところで「氷室」なる旗を見つけた。実は、あるクライアントから依頼されて「空調の歴史」なるビデオを創るために、明治時代の紡績工場から始まった空調を頭に描きながらストーリを組み立てていたが、どうも、普通のビデオにしかならず面白くないと思っていた矢先であった。  その旗を立てていた和菓子屋さんのご主人に聞いてみると、東大の敷地内にあった加賀藩邸の遺構の中に氷室らしきものがあったとのこと。好奇心をもって東大の図書館で調べてみると、確かにそれを記述した本が見つかり、さらに他で調べてみると、金沢の前田候が諸大名を招いたときに、氷室にストックしていた雪や氷を使って客殿を「冷装」したのが我が国の冷房の始まりと言うことがわかった。氷室そのものは、奈良時代から当時の権力者への献上用として全国に造られていたことは知っていたが、空調の歴史と氷室とを結びつけるのは面白いと考えた。  そこで、更なる好奇心を抱いたところ、金沢の奥座敷といわれている湯涌温泉に氷室が現存していて、毎年、冬に雪を納め、夏には氷を取り出す行事を行っていることがわかった。そのため、当初予定していた御殿場の富士紡績へのロケハンのついでに(?)金沢まで車で行くことになった。途中、黒四ダムや信州まで足を伸ばしたために約1,200kmの一人旅となってしまった。  ビデオ制作の過程で、いろいろな人に空調の歴史の話をすると、更なる新しい情報が入り、それに私の好奇心が反応するという繰り返しであった。ビデオの中に日本で最初にターボ冷凍機を積んだ軍艦として戦艦大和を登場させるために、呉の大和ミュージアムまで出かけている。その結果、かなり長いビデオとなったが、それに対する充実感は何ともいえなかった。  いままで、大なり小なりこのような好奇心で人生を送ってきたような気がするが、それらを振り返っても後悔するものはほとんどなかった。好奇心が情報を増やし、それが人との出会いや巡り会わせを生むという良い循環であったと思う。今後も大いなる好奇心を抱いていきたいと思っている。PSATSに入り赤門の前を通らなければこのようなビデオは出来なかっただろう。これも巡り合わせと考えている。


あなたもピロリ菌に冒されている???・・・・・太田統士

 「ピロリ菌低減ヨーグルト」というのがテレビコマーシャルなどによく出るので、ピロリ菌という名前だけは最近人口に膾炙しはじめています。しかしピロリ菌とは一体何なのか、まして自分の胃の中にピロリ菌が生息しているかどうかは知らない人の方が多いと思います。
 40才代から胃炎や胃潰瘍に度々苦しめられていた私も、つい最近までピロリ菌の有無を知らなかったわけです。というのも、昨年小さなポリープが発見され内視鏡による粘膜切除法による手術を受けたのをきっかけに、この2月の始めにやっと検査を受けたところ、果たしてピロリがいたのです。
 ピロリ菌の感染経路は未だよく解明されていないそうですが、主として幼年期に感染すると考えられていて、我が国では50才以上の人の80%弱が感染しているといわれています。
 元来、胃の中は強い胃酸のため菌は棲めないとされていたのですが、このピロリは胃粘膜に定着して酵素(ウレアーゼ)を出し、胃の中にある尿素をアンモニア(アルカリ性)と二酸化炭素に分解して、胃酸を中和して自ら棲みやすい環境をつくり出して生息するもので、1982年になって発見されたということです。正しくはヘリコバクター・ピロリといい、ヘリコバクターは旋回するひげをもつバクテリアを意味し、ピロリは初めて発見された胃の幽門部ピロルスから取った名称だそうです。
 ピロリ菌は胃酸を中和してしまうので、粘膜の防御能力を低下させ胃炎を起こし、ひいては胃潰瘍や十二指腸潰瘍や更には胃ガン等を起こしやすい下地をつくってしまうわけです。しかし、潰瘍やガンが発生せず、慢性胃炎の状態で終える人もかなり多いということです。
 検査は吐く息の中の二酸化炭素の量で簡単に調べられ、陽性ならばペニシリンともう1種類の抗生物質と胃酸分泌を抑える薬の3種類、合計5粒を朝夕一週間服用することで80%の人は除菌可能ということです。これで駄目な場合は更なる手段で残りの部分の80%も除菌OKと云うことであり、除菌すれば胃潰瘍や胃ガンの再発率はきわめて低くなるとのことです。
 あなたも80%に入っていませんか???一度調べてみたらどうでしょう!!