- 観・想・考13
- 「施工図のゆくえ」・・・・・笠原秀樹
- 神宮前のワタリウム美術館で、バックミンスター・フラー展をみた。
B・フラー(1895~1983)は、フラードーム(1967)で知られているが、六角形の床を中央の柱からつり下げたハウス(1929)や、流線型三輪自動車(1933)、ユニットバスの原型であるバスルーム(1937)、また宇宙船地球号操縦マニュアル(1963)など、フラーは時代を半世紀以上も進んでいた。
会場では彼の描いた青写真図面が、模型や写真などと共に展示されていた。日本でも昭和30年前半までは建築図面も青写真だったことを思い出した。
バブル経済最盛期の頃、ある担当工事で壁面より8cm持出し構造のサッシを施工した。3年後に漏水調査でメーカーに施工図を求めたところ、原図は廃棄したのでないという。
ゼネコンは近年、竣工建物の設計図をマイクロフイルム等で保存しているが、膨大な量の施工図までは手がまわらない。施工図は、設計図書を具体化するための現場とメーカー技術者の知恵と技術の集積で、施工図なしに建物は出来ない。だが、施工図、工事写真、工程表など工事記録は保存の仕組みがない。
私の担当した工事では、建物の階段下や地下のデッドスペースをもらい、施工図一式を製本し現場制作原図と共に保管してきた。皆で検討し全てに目を通した施工図は、安易に捨てられない。
ところでいま、戦後の輝かしい建築技術のメモリーとして、各種の施工図はどの位残っているだろうか・・・。
フラー展でこんなことを思った。(完)
「不苦労」 ・・・・・ 池田博俊
- ゴールデンウィークの合間、翌日久し振りに都心に出掛けるので、夜の8時頃、天気がどうなるか玄関先で空を見ていました。突然、南の方から大きな鳥が飛んで来て、家の前の電話線に止まりました。止まったかと思うと、すぐ北の方に飛び去って行きました。
飛んで来たときは、カラスかと思ったのですが、電話線に止まった姿はカラスと違い少しふっくらした感じです。飛び去る姿も何となくゆったりしていました。電話線に止まっていたのは、ほんの数秒でしかも暗く、よく観察出来ませんでしたが、フクロウに間違いないと思いました。
この辺りはカラスも多いですが、夜には見掛けません。やみ夜のカラスという言葉もありますが、カラスは暗くなるとねぐらに戻るようです。
我が家から20〜30分歩くと、実際に大鷹が営巣しているオオタカの森や、フクロウの森とか呼ばれる自然がかなり残っています。散策のときに、ちょっとした林の入り口付近の藪で餌を漁っている雉などは、何度か見かけています。フクロウは多分、森へ飛んで帰って行ったのだと思います。
私の住む市を、常磐新線(正式にはつくばエクスプレス)が通る予定です。面積35平方キロ、人口15万人と少し、中ぐらいの市ですが、市内に3駅出来るようです。開通の時期も迫り、急ピッチで工事が進み、最近あちこちで森が切り開らかれています。鳥たちの住む場所も狭められるのではと奇遇しています。便利になるのは良いのですが、自然破壊の代償ではあまり有り難くありません。建設業に関わる者としては複雑な思いです。
今でも、あの鳥は絶対フクロウだと信じています。フクロウは「福郎」とか「不苦労」と書くこともあります。一瞬とは言え、我が家の前に止まり、しかもそれを偶然目撃出来たのは、きっと何か良い事がある前兆ではないかと思っています。
「自己紹介」
・・・・・ 土谷耕介
- 私の専門というよりは40年近い会社生活のなかでの経験の長かった領域の一つは「プレキャストコンクリート」であり、もう一つは「建築生産における品質管理」ないしは「建設業におけるTQC」で、どちらも10年以上かかわりました。
実は現在も或る大学院で「建築量産工学特論」を担当しておりますが、そこでは「“プレハブ”と“建築生産工業化”同義とする人も少なくないが,実は全く違う」ことをまずわかってもらうことにしています。また、現在ものすごい普及?を見せております「ISO 9000」は、10年以上前に「“世界に冠たる日本のQC/TQC”の延長上にはない」と知りましたので、深入りしないようにしておりますが、「建築生産も“管理技術”の段階に入った」ことは間違いない、と認識しております。
また、「PCa」であれ「QC/TQC」であれ、私はともに「建設業の変身の問題」と認識しております。すなわち、PCaの問題は「建設業の一角で“工場経営”が成り立ち得るか」、QC/TQCの問題は「建築生産の現場で、「あいつのいうことは理屈っぽすぎる」とおっしゃる向きには「あなたの会社は理屈なしで経営できるんですか?と問い返すことにしております。