「ホテルニューオータニ」・・・・加賀秀治

 私がコンクリート関係の仕事に携わるようになったのは、昭和33年大成建設の技術研究所に配属されてからのことです。それまでコンクリートは全く無縁の存在でしたが、実験所の建物を打ち放しの軽量コンクリートで建てることになり、急遽勉強を始めました。丁度その時、東大で建築材料を教えておられた田中一彦助教授が研究所にこられ、そのご指導で無事完成させることができました。それ以来、工事現場からの依頼や学・協会の委員会活動を続けているうちに、いつの間にかコンクリートが私の専門分野になってしまいました。
 研究を始めた頃は丁度高度成長期で、次々と大型の建物が建設されました。私もホテルニューオータニ、新宮殿、大石寺正本堂、安田火災本社、伊方原子力発電所、新宿センタービル、東京都庁舎など多くの工事に関与しましたが、最も記憶に残る仕事としてはホテルニューオータニ本館(1964)とタワー棟(1974)の工事が挙げられます。
 ホテルニューオータニ本館は柔構造形式を採用した17階建ての高層建築で、軽量化・プレハブ化が大きな課題でした。その頃、私も気泡コンクリートや人工軽量骨材の研究を行っていましたから、その成果を高層階の床スラブや妻壁のPCカーテンウオールに役立てることができました。これらはわが国で最初の実施例だと思います。この建物にはそのほかにも多くの新技術が採用されましたので、その後の研究にとって貴重な体験となりました。
 その10年後に建てられたホテルニューオータニのタワー棟では、積層工法が威力を発揮しました。コンクリート関係ではバッテリー型枠や浴室ユニットの開発を手がけ、1万ピースを超すPC部を工事現場で生産することになりました。
 これらの大型プロジェクトに参画でき、本当に幸せだったと思っています。  

左:ホテルニューオータニタワー棟のバスユニット  右:建設中のホテルニューオータニタワー棟

ホテルニューオータニ本館全景