シンポジウム・セミナーのご案内

平成21年度「サーツ寺子屋」

第6回
11月16日(月)

18時~

終了しました

 
講 師:槙谷榮次 関東学院大学名誉教授 
テーマ:「集合住宅に対する新しい耐震改修工法 」

紹 介:既存建築物に対する耐震改修は、1995年に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行されて、学校施設が文部科学省の助成を受けて大都市圏では残り少なくなって集合住宅の耐震改修に移行している動向が見受けられる。
 集合住宅の耐震改修の場合、学校施設に多く適用されている鉄骨ブレース工法を用いて補強することは居住者の理解を得ることがむずかしく、集合住宅の耐震改修耐震改修に対して適切な補強工法が開発されることが肝要となる。集合住宅の耐震改修を施す場合、居住者が強く望むことは、居室内に工事関係者が入らずに施工を行うことである。この条件を満たす耐震改修工法としては、外側構面に対して外部から耐震改修が可能な完全外付けタイプの補強工法の適用が不可欠となる。
 此の度、神奈川県に建つ大規模な民間の集合住宅―シーサイドハイツ平塚、長方形と雁行型の平面形を有する4棟から成るーの耐震改修において、鋼板と連続繊維シートを併用した完全外付けタイプの補強工法(SPAC工法)を柱と仕口部に対して適用する計画が進んでいる。本計画は、集合住宅の耐震改修に対する国土交通省の助成制度に建築技術支援協会が応募し、第一号として採用され、本年12月までに改修工事に着工し、来年3月までに完了することが義務付けられている。
 集合住宅の耐震改修に対して、完全外付けタイプの補強工法を適用したこの具体例を紹介し、今後の方向性を示す所存である。
第5回

10月28日(水)
18時~

終了しました

 
講 師:米田雅子 慶応義塾大学教授・NPOサーツ常務理事
テーマ:「次世代林業システムについて」
紹 介:国際森林年の平成23年度に向けて、省庁横断的なナショナルプロジェクト「次世代林業システム(仮)」の提案が検討されている。その概要と方向性を説明し、寺子屋の参加者とディスカッションを行う。
 「次世代林業システム」は、広域、長期林業経営を推し進め、生産、流通、利用の一体化と全木材100%利用(カスケ-ド利用)を図りながら、国産材利用率を50%に引き上げることをめざす。このシステムの担い手は、林業・木材関連業だけでなく、住宅、製紙、建設、エネルギー、鉄鋼、機械、商社、金融機関、地方経済連合会など広範囲におよび、地域バイオマス事業をはじめ、森林資源を利用した多様なビジネスを創出する。これらの事業が、森林の健全化、CO2吸収、生物多様性の保全、国土保全、水源かん養につながるような仕組みを構築する。

第4回
9月25日(金)18時~

終了しました

 

講 師:和田 章 東京工業大学教授・NPOサーツ代表理事
テーマ:「五重塔の原理を応用した11階・9階建校舎の耐震改修」
紹 介:現在の耐震技術は構造力学、振動力学、地球物理、地震学などにより科学的に説明され、工学として纏められ、実際の施工の技術として普及しているが、すべてが説明できているとは言えず、1000年以上昔に五重塔を建立した棟梁たちが科学的根拠なしに行なってきた技術を超えているとはとても言い難い。
 日本の五重塔は九州などで台風によって倒れた例はあるが、地震で倒壊したことはないという。各層を構成する細かい木組みの高いエネルギー吸収能力と、心柱による特定層破壊の防止など五重塔に秘められる耐震技術は我々の考察の原点である。
我国に限らず、ほとんどの国で、多層建築物の耐震性を議論するときは、建築構造物を層毎に分けて考察する。たとえば設計用層せん断力、層の保有水平耐力、層間変形角などが層毎に定義されていることでも分かる。
 柱が梁に比べて強い構造、連層耐震壁が上手に設置されている構造の場合、よく知られているように、層の保有水平耐力は与えた外力分布によって、どのような値も採りうる。たとえば、連層耐震壁が単独で立っているとき、最上層にのみ水平力を与えれば、脚部の曲げ破壊で耐力は決まり、そのときの層せん断力分布は高さ方向に一つの値になり、もし、2階の床位置にのみ水平力を与えれば、1層の壁のせん断破壊によって耐力は決まり、これは上記の値に比べれば相当大きな値になる。ただ、このときの層せん断力分布は、1層でのみこの耐力、2層以上の層せん断力はゼロとなる。
 建物の強さを層毎に考察していることに矛盾があることが分かる。別の言い方をすれば、強い柱、強い連層壁は動的に働く層せん断力を最も効率よく受け持ってくれると言える。これが五重塔の心柱であり、特定層破壊を防止してくれる。
 多層建築の耐震補強を行なう場合、層毎の耐力不足を計算し、これを筋違や耐力壁の増設によって補おうことがよく行なわれているが、建物を全体として考察する観点が抜けている。
 ここでは、1970年代に設計施工された11階建てと9階建ての大学の校舎について、五重塔の考えを活用して、脚部でピン支持されたロッキング型連層耐震壁を複数増設する耐震改修法について紹介し、皆様のご意見をお聞きしたいと考えます。

第3回

6月24日(水)18時~

終了しました

講 師:松本信二 建築・住宅国際機構シニア・フェロー・元清水建設技研・NPOサーツ会員
テーマ:「RFIDの建築への適応」 -建物生産情報の一元化をめざして-

紹 介:RFID (Radio Frequency Identification) とは、ICチップと電波を用いてモノやヒトを識別する自動認識技術である。物流業界で広く使用されているバーコードシステムをさらに高機能化したものとして多くの分野で適用が進められている。建築分野でも、工程管理、品質管理、維持管理等に適応されつつある。本講座では、RFIDの特徴を理解し、各種の適応事例を紹介したい。そして、今後どのような新しい適応が考えられるか、新しいアイデアの発想について討論したい。

第2回

5月15日(金)18時~

終了しました

講 師:加瀬善弥 元鹿島建設構造部長・NPOサーツ会員
    津田勝弘 地震防災建物安全協同組合 代表理事・NPOサーツ会員
テーマ:「耐震改修技術の動向―実例及びピアチェックの立場から―」


紹 介:特定建築物(学校、病院、劇場、百貨店、事務所など)では多数の人々が集まるため、建物は必要に応じて耐震改修を行うよう、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」で定められています。学校、デパートなどでは耐震化も進んでいますし、四川大地震で多くの校舎が倒壊し、多くの生徒が被害を受けたことから、文科省、国交省が推進しています。このような状況のなか、最近は居ながら施工の改修が要望され、それに伴い多くの工法が出ています。いくつかの工法を紹介し、またピアチェックからの問題もお話しいたします。

第1回

4月15日(水)18時~

終了しました

講 師:松村秀一 東京大学教授・NPOサーツ代表理事
テーマ:「建築再生の時代―200年住宅を契機に考える明日の産業と技術―」

紹 介:日本の新築住宅市場はこの2年間連続して110万戸台を割り込み、今後も縮小することが各方面で予想されている。間違いなく日本の住宅関連産業とその技術は大きな転換期を迎えている。そうした中で、平成20年度から始まった「超長期住宅先導的モデル事業」更には平成21年度より動き始める「長期優良住宅認定制度」等、いわゆる「200年住宅」が今日の住宅政策の大きな柱になっている訳だが、この政策は、今日必要な産業や技術の方向付けにどのように活用できるのか。また、そうした政策とは別に民間企業や技術者は今何をなさねばならないのか。このことを考えたいと思う。