「ガーデナー1年生の記」・・・・・矢野克己

 芸のない私が趣味について書く資格はありません。編集の伊藤さんの課題から外れますが、無趣味の人間の退職後の現状報告とさせて頂きます。

 目下の私は、建築関係のボランテイアの他は、犬の散歩と庭草の管理が我が家での仕事です。

 犬は目下のところキャバリア・キングチャールズ・スパニエール2匹です。これ以前は、結婚以来都合4匹を飼ってきましたが、終に一度も散歩させた記憶がありません。犬種は3種でした。全て「ママ」任せの無責任亭主を決め込んできました。

 しかし、退職しますと家でゴロゴロしているとつい夫婦喧嘩になりますから、喜んで散歩係りを引き受けて楽しんでいます。早朝の散歩は気分が良いし、犬仲間のお友達ができ、まちを歩いていても妙齢の美人に微笑みかけられる余得もあります。そばにいる家内に「どなた?」「うん、トイプードル2匹の方」と答えて、ニヤニヤしています。時にはお宅に招かれる方もあり、訪問することもあります。勿論犬共を連れて。

 しかし、犬の散歩は朝夕のみですので、昼間は専らガーデナーです。と言うと格好が良いのですが、実態は土方兼水撒き係りです。家内が最近医者にガーデニングを出来るだけセーブすることを勧められましたので、指図はするが、施工は私と相成りました。そこで、苗を買ってくるのはデザイナー、植えるのは私となります。言われるままに水と肥料を撒いていましたら、専門家?から「お宅の庭は水と肥料でジャブジャブだ」と言われたそうです。「指図は具体的に」と申しましたところ、花の名前が次々と出てきて、私には区別がつきません。面倒だからと、花の咲いているのは液肥とし、他は時折固形肥料を撒くことでごまかすことにしました。

 見事に葉が茂り大成功と悦に入っていると、「適当に間引くこと」とのお達し。「適当に」とはどの程度かが問題です。2人の判断の違いは、私は折角伸びたので勿体ないと残しがち、家内はズバズバカットします。これは、女性の思い切りの良さの現れではないでしょうか。時には、ドカッと引き抜いてしまいます。確かに結果は良いのですから仕方ありません。

 そこで、ガーデナー1年生は腕力で勝負することに致しました。花を植えるに当たり、その付近の土壌改良をしっかりすることです。小さい苗でも可能な限り広く深く掘り、腐葉土等をたっぷり入れておく作戦です。効果はてき面です。私の植えた付近は草木共に元気で、これまでの庭とは断然育ちが違います。長年研鑽してきた先輩ガーデナーに対し一矢を報いることが出来ました。

 目下、狭い狭い庭を改造しようと計画中です。植木鉢で足の踏み場もない現状から脱し、木陰に下草が美しく、手入れもそれほど要らない庭へと変身さすことです。そして、ご近所に迷惑をおかけする泥水の流出を極力減らすことです。そのために、大きい石は動かせませんが、庭に転がっている中小の石を活用して、モルタルで固める工事中です。水を最小に抑えれば良い筈とセメントをこねるのですが、拾い集めた石の大きさ、形などさまざまで、施工者は素人と来ますから、頭と手が全く一致しません。とてもお見せできる状態となっていません。泥水の流出は減りつつありますので、自分では納得しています。デザイナーは「見ると文句を言いたくなるから見ません」と称しています。毎日、いやおうなく目に入っているはずですが。

 犬や草木を相手にしているとつい楽しく、約束の原稿があれこれ溜まってしまいます。貧乏暇なしです。これも健康法と自画自賛しております。最近は特に犬や草木に愛情が湧いてきました。前の犬達は火葬に出すのさえ家内任せでした。しかし、今後は別れがつらそうです。どちらが先かは分かりませんが。

写真1 4匹の犬に囲まれて
我が家の小さい2匹犬と娘の家の大きい犬2匹を一緒に並ばすのに苦心しました。4匹を散歩させるときは戦争です。

写真2 月下美人
知り合いのご婦人より頂いたサボテン。3年目には咲きますよとのことで、書斎の窓辺で育てて2年目の開花。