「サーツ 活動に望むこと」


本年春季号からサーツ活動の今後について 検討を重ねてきました.設立以来8年が経過し,社会情勢も変化し,会員の高齢化が進む中,世代交代も難しい状況にあります.今号では今までの活動に協力,参加して頂いた方々にどのように評価されているか,問題はなかったかのお話を伺い,今後の活動のヒントを頂く事としました. 又,阿部常務理事にも「会員に望む」コメントを頂きました.

「サーツのリノヴェーションのために」・・・・ 阿部市郎
 サーツは来年で10期を迎える。

 今サーツのホームページを開くと、まことに盛りだくさんの活動分野が記載され、セミナーも各種行われている。対外的にもサーツの活動を通してNPO としてのステータスも認められてきた。その意味では順調な発展を遂げてきたといえよう。  しかし、目論見が外れたものもある。バブル崩壊後の建設不況の最中にサーツは発足したが、歳を追って60代の未だ技術も体力もある方々が会員予備軍として世の中に出て、サーツに参加され我々の理念を引き継いでいかれるであろうと期待していた。  現実は建設業況は回復しリタイア年齢の技術者も会社に引き止められ、準現役として企業を支えるのが常態化している。そして、サーツは気鋭の会員が増し加えられないまま、執行部は全員が10年歳を加えた状態で推移しているのである。

 「攻撃は最大の防御」といわれるが、現状を振り返るとサーツの活動がマンネリ化し、10年間皆が力をあわせて推進してきた事業の活力が失われつつあることが、最大の問題である。

 昨年来サーツは、「今後の方向について」経営分科会の論議を活発化し会報誌上でも特集をしているが、サーツ設立の理念に立ち返って今一度志を立てることが必要なのではないか。

 自己満足をしている時は進歩がない。サーツは外から見てどのように見られ評価されているのであろうか?

 そこから、我々の踏み出すべき方向が示され、使命が芽生えてくるのではないか。

 経営の基本は「出を制し入るを計る」である。まず、直ちに出来るのは無駄を排除して経費の節減を計ると共に、各部会が企画に知恵を絞り、各人が動き、外部にも働きかけをすることではないか、如何に素晴らしい会員が揃っていても座して待っていては何も生まれてこない!

 適切な優れた企画なくして仕事は生まれてこない。そして行動しアッピールすることで動き出すものと考えている。  会員各位が積極的に提言し行動に移されることを期待したいのである。

「様々なセミナーに参加して」 ・・(株)藤島建設 設計部 阿部直美

 私がサーツのセミナーに参加するきっかけとなったのは、会社の教育訓練の一環として、数名の同僚と「すまい・るホームビルダー実務セミナー」に申し込んだことです。その時はまだ私自身二級建築士の資格を取得して間もなく、セミナーのスケジュールを見て「是非受けてみたい」と思いました。この実務セミナーのように、耐震や断熱、地盤、工法、環境など多分野に渡る建築に関する内容と、その専門家の先生による講習会は他には無いと思ったからです。実際に受講してみて、理解できた部分、専門的過ぎて難しかった部分もありましたが、とても勉強になりました。

 また、実際の仕事では設計業務と併せてプレゼンテーション業務も行っているため、プレゼンやインテリア、プランに関するセミナーにも参加させていただきました。今まで自己流でプレゼンを作成しておりましたが、なかなか別の表現技法を学ぶ機会がなかったため、パステルを用いたプラン表現など、とても新鮮に感じました。プランセミナーでは初心者向けの内容で、実例を挙げていただきながら実習も行い、各部屋の性質を踏まえたプラン時の注意点などを分かりやすく教えていただきました。

 日々技術が進歩する中、また、建築基準法の改正に伴う対応に戸惑う中、最新の情報を教えていただけた、とても良い機会となりました。改めて、講師の皆様、本当にありがとうございました。また、是非これからもセミナーの企画を続けていただきたいと思います。これからもサーツの活動に期待しております。  

「外から見たサーツの活動と今後に望むこと」・・ 住宅産業塾 塾長 長井克之  阿部常務理事との関係で、サーツには日頃お世話になり、住宅産業塾の運営にも大変役立ち助かっています。特に設計力強化研修で素晴らしいサポートをしていただき、参加社・者から喜ばれ、お客様に設計提案や魅力あるプレゼンができるようになっているのは心強い限りです。今後とも継続して実施していきたくよろしくご支援お願いいたします。

 今、住宅業界は大転換の時期に来ていますが、一方で基礎技術のなさが顕著に現れています。見栄えや表面的技術は良くなっていますが、従事する担当者のレベルも極めて低く、設計での欠陥や、良くないプランを平気でつくっている有様です。また施工管理にしても何が正しくて、何が不適格で、何が欠陥なのかもわからない管理でゾッとする実に怖い状態にあります。いずれも学校を出ただけで十分な知識や経験・知恵を持たず、また社内で正しい教育がなされないまま住宅づくりをしていることによるものです。

 このままいくと姉歯事件などのようにユーザーが悲劇を見るので、豊富な知識と知恵と経験のある、フェアーな立場のサーツのより一層の出番だと思います。しかし失礼ながらもうひとつ積極性が足らないように思います。求められる知恵と財産がありながら、登録だけして、仕事が来ればやるよといった待ちの姿勢によるものが影響しているのではないかと思います。今、助けが、支援が必要です。ぜひ住宅業界の改善・改革のために素晴らしい知恵を発揮してください。お願いいたします。

 住宅産業塾も、各地でファームづくり的な活動をし、心ある未来の技術者を育てていきたいと思っています。今後より一層の協力関係を築きたいものです。  

「サーツセミナーへのお礼と期待を込めて」

・・・・ヤマハリビングテック(株) 商品プロデューサー 村松正規

 平成12年度からの7年間「すまい・るホームビルダー実務セミナー」を受講させていただき、他では得られない高度な知識を習得することができました。事実、ここで得た知識は、数々の現場や局面でとても役立ちました。この場をお借りし、御礼申し上げます。

 さて、ここからは気がついたことを2点、率直に申し上げたいと思います。

 1つめは、セミナーで提供される情報が受講者の属性とマッチしていないのではないかと感じることがあることです。

 具体的に申し上げると、工務店経営者、現場監督、設計担当者といった方が受講されているように思いますが、「とても良い話だったけど、上司、場合によっては経営層までが共有していないと行動に移すのは難しいだろうな」と感じることがあります。  これは、先輩や上司の(間違った)経験や知識のために、折角得た正しい知識が活かせない苦い体験をしたことからの懸念とも思える感想です。

 2つめは、現場監督や設計監理に必要なスキルの場合「知識が実感として自分のものになっていないため、現場で実際に指示するのは難しいだろう」と感じることです。これを説明するには、松下幸之助氏の次の言葉が最も的を射ているように思います。

 「きみ、奥義を極めた先生から三年間水泳に関する講義を受けたとしても、すぐに泳ぐことはできないやろ。やはり泳ぐには、水につかって、水を飲んで苦しむという過程を経ることが必要やな。そのあとにようやく講義が役に立ってくる。そういうもんやで」

 実際に自分がやってみる場があれば、講義の内容がより活きてくるのではないでしょうか?そのためにどうしたら良いのかを考える必要があると思います。

「成功の法則」なぜ松下幸之助は成功したのか(PHP研究所)より抜粋