建築士法等の改正案が11月30日衆議院を通過しました。これは、国が新たに認定する専門建築士が一定規模以上の建物の構造設計や設備設計を手がけることを柱としたもので、参議院へ送付され今国会で成立する見通しです。成立しますと、2年以内に施行されることになります。 これに先立ち、建築設備六団体協議会((社)空気調和・衛生工学会、(社)建築設備技術者協会、(社)電気設備学会、(社)日本空調衛生工業会、(社)日本設備設計事務所協会、(社)日本電設工業会)は、平成18年9月29日付で国土交通大臣冬柴鐵三氏に対して、社会資本整備審議会答申「建築物の安全性確保のための建築行政のあり方について」の、「設備設計一級建築士の創設」に対する意見を提出しました。 意見書の内容は、基本的には平成18年8月31日に報告された上記答申にあります「設備と構造の専門資格として構造設計一級建築士及び設備設計一級建築士の創設」は、「消費者にとって設計・工事監理業務の責任と権限が明確になり、新築あるいは改修される建築物の安全性と信頼性が高いものとなる有効なものと考えているが、協議会としては、建築設計技術者として高い知識と実務経験を持つ「建築設備士」(建築士法第20条第4項)の有効を図ってほしい」との内容です。 有効活用等の内容ですが、 1.建築設備士の活用 2.既建築設備士の設備設計一級建築士への認定 3.設備設計一級建築士の認定条件 4.新一級建築士の受験資格と試験方法 5.既CPD制度の活用 に分かれています。 この「構造設計一級建築士」や「設備設計一級建築士」の問題は、ご承知のように昨年の暮れに起きた姉歯建築士の「耐震偽装」から始まったわけですが、新聞や雑誌等においてはもっぱら構造の話題に終始しており、設備の関心を寄せた記事などはほとんど見当たりません。 近年において建築の設計業務や工事監理業務は複雑化・専門化され、一級建築士が構造・意匠・設備のすべてを把握することは難しくなってきた事から「建築設備士」の制度が創設され、「建築士」のアドバイザーとして地位を得たわけですが、専門性は現在さらに加速されその役割の独自性が高まってきているのではないでしょうか。 現在、一級建築士のうち建築設備士(資格取得者数約30,500人)の資格を持っている人は、3000人程度と想定されています。さらに、講習と実務経験等に審査を行うと「建築設備一級建築士」の認定人員はさらに少なくなり、一定規模基準を設定したとしても、全国での資格者数と業務量にアンバランスが生じる恐れがあると指摘されています。 答申では、建築士制度と建築行政の執行体制の見直しに重心が置かれておりますが、建築士法には「建築設備士」も一定の役割を与えられている訳ですので、意見書にもありますように、現実の設計・工事監理業務に支障が出ないよう一級建築士に加えて、一級建築士の資格を持たない既「建築設備士」につきましても一定の期間実務経験があり、指定講習の受講と終了考査などを受けた者については「設備設計一級建築士」の資格付与に配慮が必要と考えます。現在の建築設備士には20年間の実績がありますが、専門的で優れた知識と経験をお持ちの方々が大勢おられます。この、建築設備士は建築関連の資格としても質的に優れた資格の一つと考えています。 この文章がサーツレポートに載るときにはすでに参議院を通過して建築士法改正等3法案が今国会で成立していることと思います。 耐震強度偽装事件の再発防止策に関連して、国が新たに認定する専門的な建築士が一定規模の構造設計や設備設計を手がけることにより建築物の安全性や建築士制度の対する国民の信頼を回復するということは必要と言えます。 今後、法律が施行される2年の間に建築設備六団体協議会が提出しました意見書をもう一度関係者各位にお読みいただき、実務の面で建築設備士の有効活用が図れればと願っております。 |