「気がつけばエプロンをした亭主」・・・最上達雄

 食いしん坊と酒好きのせいで、20年ほど前から台所に入るようになってしまった。休日夕暮れともなると、そろそろ酒が飲みたい気分になる。晩飯の仕度はまだ出来ていないから、つまみになりそうなものを漁って冷蔵庫を覗く。意に適ったり適わなかったりで、「つまみぐらいは自分で作るか」という思い立ちがきっかけである。
 加えて、家人のおだてに乗せられたことも拍車をかけた。毎日の主婦業に飽いてきた頃で、子供たちを味方にして、「お父さんの料理は美味しい」などと言いつつ、気安く台所を明け渡すのである。
 気が付いてみれば、土日の夕食を作る役割を任ずる羽目に陥っていた。今では当り前のように買物をし、下拵えをして、晩酌の時間に合わせて作り上げる。我が家の主婦は最近、テーブルに料理が並んだ頃のご帰宅が多い。
 基本を習ったことは全く無い。テレビの料理番組を参考にして、気に入ったものはメモを取り、我流のレシピを作り、いつの日かに試してみる。数だけは自慢で、現在わが料理ファイルには600近いレシピが並んでいる。しかし、繰り返し作り続けているものは、100種類にも満たないであろう。
 要するに私が作る料理は、酒の肴にもなるような、一般家庭の平凡な「おかず」である。
 酒の種類に合わせて、いくつかを紹介する。
A. 日本酒
・蒸し鶏:暑い時期、さっぱりと芥子醤油で食べる。蒸し過ぎぬよう中をピンク色に仕上るのがコツ。
・切干大根といかの味づけ:いかは湯通し程度で軟らかく。酢を控え れば沢山食べられる。 
・ごぼうの唐揚げ:某ゴルフ場で食したものを自己流で再現。ごぼうの歯ざわりを大切に。 
B. ワイン
・牛すね肉のビール煮:牛肉としては安い部位だが、充分煮込むと美味しく食べられる。多量の玉葱と少量のオイスターソースが味に深みを増す。
今回の付け合せはマッシュポテトとクレッソン
・ グリーンアスパラと人参のサラダ:ドレッシングには好みにより少量の醤油を使うことがある。
・ かぼちゃのポタージュ:夏場は冷スープにして食するのも一興。
C.ビール
・春巻き:具の種類は気まま。あらかじめ炒めておくと揚げる時簡単。
・ピータンの白和え:ピータン豆腐は中華料理の前菜にあるが、細かく切り、最初から和えるのが新味。
・五目ナムル:芋を原料とする韓国春雨は必ず入れる。各種材料は手間を惜しまずそれぞれ炒めてから合わせる。胡麻油とにんにくは多めに。