「住宅の性能評価」 ・・・・ 飯泉勝夫

  「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が平成12年4月に施行されてから約5年が経過した。私は以前、品確法に関わった経験があり定年後、住宅性能評価委員の資格を取得し、指定住宅性能評価機関に携わり2年半あまりとなった。私の担当は主に木造住宅の設計住宅性能評価申請に関わる申請図書の設計評価審査を行っており、又、木造住宅の建設住宅性能評価申請に関わる建築現場にての指定工程による建設評価検査も時たま行っている。

 住宅性能評価書の取得数はマンション等の共同住宅にては、業者が販売の付加価値を高める目的等にて増えているが、戸建住宅の取得数は増えていない。戸建の分譲住宅にて評価書付にて販売しているところがあるが、まだまだ一部大手の業者に限られている。戸建の住宅性能評価申請は大手住宅メーカーが主体で営業方針の中で、建築主に勧めている。本来は建築主の要望により評価申請がなされるべきであるが、まだ住宅を建てようとする建築主に周知しておらず、又、性能評価書の取得に対するメリットが理解されていないのが現況である。

 大手住宅メーカーでは評価申請費用を最初の見積もりの中に計上し、建築主にメリットを説明し勧めているが、費用が15万円程度掛かるので、評価書の取得より少しでも安く、又は、他の費用に当てたい等にて取りやめとなる場合もある。建築主にとって取得する住宅が第三者機関にて性能評価され明らかであれば、より安心であり、将来に買い替等を予定されている場合はより有効である。既存住宅を購入する側でも評価書がある方が新築当時の性能が確認できるので安心である。性能表示制度をより普及させる為には、評価書を取得するメリットをもっと多くすることが望まれる。たとえば、住宅取得に関わる税制、住宅資金の融資条件、住宅保険の優遇、等の施策である。

 構造計算による耐震強度の偽造問題にて建築の構造強度に対する不安が広がっており、建設業者に対する不審も増している。住宅性能評価書のメリットを十分説明し、評価書を取得することにより建築主、及び住まい手に安心と信頼を得ることが望まれる。無論、住宅性能評価委員、指定住宅性能評価機関の評価業務をより厳正に行うことが必要である。私も住宅性能評価員として日々評価業務を行う中で勉強することが多くあり、自分成りの覚書としてマニュアルを作成し落ちの無いように勤めているが、まだまだである。

 評価申請を行うには申請代行者が品確法を十分理解し申請図書を作成することが必要であるが、大手住宅メーカーで常時申請をしている場合でも担当が精通するまでは時間が掛かる。ましてや、初めて申請する場合や、稀にしか申請しない場合は大変である。しかし普通の戸建住宅の場合であれば、一度その業者での評価申請を作成しモデルができれば、後はそのモデルに沿って作成すれば良いので容易できると思う。それにはその業者での性能住宅として各評価項目の目標等級を定め、その目標等級に沿った仕様書、施工基準を定めれば良いのである。木造住宅の場合、構造の安定で耐震・耐風の等級2以上を取得するには基準法の壁量・壁配置チェツク以外に床倍率・接合部・横架材のチェックが必要であり手間であるが、(財)日本住宅・木材技術センター発売の評価申請ツール「木造住宅のための性能パートナー」を利用すれば容易である。

 先般も戸建の分譲住宅を手がける小規模の不動産業者が、木造軸組の戸建住宅を評価書付で、初めて建設し分譲販売したいとこのツールにより作成した申請が有った。その不動産業者は今回の評価書付の分譲住宅が好評であれば、継続して実施したいとの意向である。担当の建築士は良く勉強し申請図書を作成して申請してきたので、私が、申請図書を審査したところ当然ながら多くの指摘事項や問合せ事項が有った。そこで指摘事項に正しい解答を、問合せ事項にはその趣旨を記入し、その担当者を呼び説明して訂正した申請書を提出して頂いた。これで設計住宅性能評価書ができたが、現場にて設計住宅性能評価書通りの施工が成されなければ建設住宅性能評価書の発行ができないので、現場検査も指導する事とし現場検査に行ったところ、現場施工業者の担当はじめ、責任者も立会い熱心に取り組む姿勢が見えた。このような業者が増え住宅性能表示制度がより普及することが望まれる。