本書は、建設企業の経営者が、自社の経営を真正面から見直すための本である。経営計画をたてているか、工事の原価管理・実行予算管理はできているか、業務フロー改善に取り組んでいるか、キャッシュフローは大丈夫か、外注費・調達コスト削減に取り組んでいるか、自社の財務状況を正しく把握しているか、法令を遵守しているかなど、日々の経営における地道な改善ポイントを振り返る本である。これらの項目は当たり前に見えるかもしれないが、残念なことに、建設業の経営者には、これらをきちんと行っていない方も多い。
ただし、建設業をとりまく環境は厳しく、経営計画をたてると会社が1年後には立ち行かなくなると予測されてしまう場合もある。その時には、経営統合、合併などの可能性に加えて、冷静に倒産も検討したい。会社が破綻すればすべてお終いと考える方もいるが、実際には倒産には幾つかの選択肢があり、良い倒産も悪い倒産もある。本書にはその選択肢も示した。辛い話であるが、次の芽を残すような倒産をめざしたい。
建設市場は減少したというものの、建設業は国土や社会基盤を守る重要な基幹産業としてなくてはならぬものである。また、都会の大手ゼネコンだけ残れば良いということはない。各地域に技術と経営とモラルに優れた地域建設会社が残ることが、災害が多い我が国の国土を守るために不可欠である。
建設業はいま大きな転機を迎えている。建設経営者がプロの経営者に生まれ変わることは、建設業が新たな活力を得ることにつながる。建設業を根本から立て直す力は、この苦境をくぐり抜けた経営者から生まれるに違いない。
本書は、こんな想いを共有する経営研究者、中小企業診断士、経営コンサルタント、建設関連経営者、元建設経営者、それに地域建設業の多角化を支援してきた米田が、建設支援リーグを結成し、企業経営の現場を支えるために書き上げたものである。
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