「自著によせて」・・・・ 米田雅子


■ 建設業から始まる地域ビジネス /著:米田雅子+建設トップランナーフォーラム

■ 出版社/ぎょうせい

■ A5判 199頁= 2,000 円(税込)

 近年の急激な公共事業の縮小で建設業は疲弊している。ダンピングも広がりつつあり、特に地域建設業の弱体化は著しい。しかし、地震や台風などの災害が多い我が国では、各地域に風土を熟知した優良な建設会社が残り、災害などの緊急時に出動できる体制が欠かせない。社会基盤を維持していくためには、各地の熟練技術・熟練技能を継承していく必要がある。

 地方の社会基盤を健全に維持していくために、建設業の力を活かして、新しい地域産業をおこすことをテーマにしたのがこの本である。建設会社が多角化することで生き残り、地域を活性化しながら同時に社会基盤を担うことが、持続可能な社会基盤につながる。

 企業型農業、森林バイオマス、自然エネルギー、環境共生事業、高齢者支援事業、健康産業、観光事業、地域ブランドづくり、林業再生、育てる漁業、ローカルPFIなどに取り組んでいる建設会社50社の事例を、この本で詳しく紹介している。さらに、頑張る社長のインタビュー、支援団体の活動も掲載している。

 これらの事例は、平成18年7月に東京で開かれた「地域発―建設トップランナーフォーラム」で発表されたものである。このフォーラムの主催は日本青年会議所建設部会、共催は東京工業大学統合研究院であったが、フォーラム終了後に、参加者を中心に「建設トップランナーフォーラム」という団体が結成され、3年間の期限付きで分科会研修や情報交換が始まった。ちなみにサーツはこの団体の事務局業務をサポートしている。

 都市と地方の経済格差が広がるなか、地方が元気を取り戻すためには、地域産業を興す必要がある。建設会社の方々が、公共事業が減るという苦しい中にあっても、持てる力を活かして、事業の多角化をめざし、雇用の場を増やす努力をしていることは、とても意義深いことである。従来型の建設業を脱却した、新しい事業への挑戦のなかに、地方再生の鍵がある。