1995年1月17日に発生し、私たちに強烈な印象と記憶を刻み込んだ阪神・淡路大震災から11年が経ちました。振り返ってみると、阪神・淡路大震災がけっして特異な地震だったわけでないことに改めて気づきます。鳥取県西部地震(2000年)や芸予地震(2001年)など、大きな被害をもたらした地震がその後も発生しています。2004年秋に起きた新潟県中越地震と2005年春に起こった福岡西方沖地震も記憶に新しいところです。日本には活断層が約2000近くあり、国土の上どこで地震が起きても不思議ではない状態です。またプレート型の地震として東海地震については「いつ発生してもおかしくない」、東南海地震や南海地震については「今世紀前半にも発生が懸念されている」また、「今後10年程度経過した段階で東海地震が発生していない場合には、東海地震と東南海・南海地震が連動して発生する可能性も生じてくる」ということが中央防災会議の見解として述べられているところです。
地震による被害、とりわけ命と財産を守るためには、住宅や建築物の倒壊を防ぐことが最も重要であり、そのためには耐震診断をして必要な耐震改修を実施することであります。そのために耐震診断の基準や改修指針の作成や普及また耐震診断の行なえる専門家の育成といった活動を続けてきました。
出版を準備している最中に、耐震構造偽装事件が起こりました。一人の元建築士の構造計算書の偽装によって、多くの方のマイホームの夢が失われ、これから住宅ローンの返済に苦しまれるかと思うと言語道断の行為であって、怒りを覚えずにいられません。
住宅や建築物の耐震性能は目に見えない性能です。デザインや使いやすさのように、見て分かるものではないため、住宅の購入者は建築士の専門性と建築確認を受けているということ、そして分譲業者の説明を信用して購入してきたと思います。地震が来なければ、耐震性があるかないか分からないから、耐震性のないものを平気で造り、分譲する、これでは高いお金を出して、一生の買い物をする消費者はたまったものではありません。
住宅市場は今まで売り手市場で、膨大な需要に支えられて供給すれば買い手は必ずありました。しかし今時代は変わりつつあると思います。国民は自分のお金を何に使うか選択の時代になってきました。ヤを買うか、海外旅行に行くか、子供の教育に使うかこれからは最も大事と思う価値観に従ってお金を使います。情報の公開されていないものには、リスクがあってお金を投資することが出来ません。そう考えると、住宅や建築物の耐震性能に関しては最も情報公開が遅れている分野の一つでしょう。新築や既存の住宅や建築物の耐震性能について、もっともっと情報公開が望まれます。命や財産を守ることは住宅や建築物の耐震性能が大きくかかわっているからです。
情報公開された性能について、国民が価値観を形成し、そこに消費が生まれ、又良い物件が供給される。こうした循環によって大きな住宅市場が育っていく社会にしたいものです。今、耐震性能のある住宅や建築物が供給され、耐震化が進むことは、日本経済にとっても大きな内需を起こし、持続的経済発展にとっても大きな意味あることと考えています。
耐震化を進めることは自分の命や財産を守ることですが、後世に安心できる建築ストックを残していくことでもあります。一人でも多くの方に読んでいただき、耐震診断・耐震改修が推進されていけば幸いと思っています。
|