昨年10月に岳父を亡くした。父の家は代々、日蓮宗だがその父が、生前、早くから自分で用意していたお墓が、なぜか真言宗だった。改宗をせまられた。結局は母の住まいに近いというだけの理由から、それまで全く付き合いの無かった日蓮宗のお寺を菩提寺にすることに決めた。ここに至る紆余曲折の中で、自分自身の宗教に対する考え方も変わりすべての宗教を捨てることにした。
そんなときに、この本に出会った。今更の感もあったが、考え方の整理と確認の意味で読んでみることにした。この本は、地球上の宗教を、ざっと概観するには格好の教材といえよう。西側では、エホバを奉じるユダヤ教を源流とするキリスト教、イスラム教、そして東側では、仏陀を開祖とする仏教の三つが世界三大宗教と呼ばれる由縁、仏教徒より多くの信者を持つヒンズー教がその中に入らない理由なども解りやすく解説してくれている。西洋人の合理性と日本人の曖昧さも、宗教の生立ちを背景にすれば理解しやすい。西側の宗教は、他民族にも受け容れられやすいデジタルなものでなければならなかった半面、安易に妥協を許せない面もあり今日に至るまでその対立には深刻なものがある。一方、神道に始まる日本の宗教は、元々土着のもので、曖昧さそのものである。あらためて理路整然と説明する必要も無かったのであろう。しかし、著者は、そんなことより、そもそも宗教とは、という視点から宗教を捉えることによって、宗教がともすると特別なもの、別世界のものとして捉えられがちであることや、仏教、神道、キリスト教などと呼んで、なんとなくその枠組みが解った積もりでも、実は、その定義は非常に表面的なものであるということを教えてくれる。
なにか信ずるものを求めるとすれば、それは、必ずしも既成概念の宗教・宗派である必要は無い。自分自身が、正しく生きていく上で、心のよりどころとして、信ずるに値するものがあれば、それが、当人にとっての宗教であるとの感を、あらためて確認することのできる一冊であった。
|