最近読んだ本・・・・奈良利男
■痛快!ケンチク雑学王/著:建築うんちく隊
 池袋に続き、新宿にも話題の新しい書店がオープンした。この書店には書架の脇に椅子があり、図書館代わりに調べ物をするには便利である。その書店で平積みされていた一冊が本書である。最近は雑学がはやりのようで類書も多い。およそ建築専門書の書架には異質の装丁の本書は、主にそのジャンルの書架に置かれるのであろうが、よく売れているようである。
 内容は「用途1.クフ王のピラミッドは・・・墓ではない(かもしれない)」からはじまり、規模、事件、転用、風俗、起源、材料、都市などに分類して、建築に関するいろいろのエピソードについて113のテーマで紹介している。
 「建築うんちく隊」は、後藤治(工学院大学工学部建築都市デザイン学科助教授)を隊長とする6名で構成されている。隊員は全員建築史の専門家である。まえがきによると建築学会などの会議の後など、酒を飲みながらの気楽な席で「オタクの会話」に花を咲かせる隊員に、彰国社の編集者が「それを本にしないか」と持ちかけて実現した本であるという。 隊員は一般の人に建築に関心を持ってもらいたいと念願して執筆したようであるが、1テーマを見開き2ページにまとめている関係から、テーマによってはかなり専門的な内容が詰め込まれているところも見受けられる。例えば、ヨーロッパ建築史に登場する建築家の名前など、建築を専門としていてもなじみが薄く、飛ばして読みたくなるページもある。しかし、「用途103.エッフェル塔のてっぺんには・・・エッフェルさんのオフィスがあった。」など、全体としては面白く読むことができた。
 サーツも建築の仲間内に情報を発信するだけでなく、もっと一般の人に建築に関心を持ってもらうための情報を発信することを考える必要がある。本誌連載中の中村正實さんのタイル史の原稿などは、他の材料史を加えて一冊にまとめると立派な類書ができると思う。優れた企画さえあればサーツには執筆者はいるのである。本書はそのための参考にもなると思いながら読んだ。
■出版社/彰国社
■新書版243頁=1,680円(税込)