最近読んだ本・・・・中村俊一郎

■ この国のけじめ /著者:藤原正彦
 この本の帯には『日本には守るべき「国柄」がある』と書かれている。本著の中で作者は前著の『祖国とは国語』及び『国家の品格』に続き、国語(日本語)を学ぶことの大切さと日本人の規範として「武士道精神の復活」を訴えている。目次の章立ては「国家再生の道標」「祖国愛」「甦れ、読み書き算盤」「学びのヒント」…と続く。
 例えば、最近話題の小学校での英語教育について『大切なのは伝達手段の英語より、断然、伝達内容であり、その人の人柄である。間違いだらけの英語ながら尊敬、信頼されている日本人は身近にいくらでもいる』と痛烈に批判し、減少した国語の授業時間の復活を訴えている。パソコン教育についても同様である。さらに「義、勇、仁といった武士道精神の柱となる価値観」や「礼節、誠実、名誉、忠義、孝行、克己など大切な徳目」に必要な家庭教育の重要性を強調する。かく言う著者は御茶ノ水女子大学理学部教授で数学者である(作家の故新田次郎氏の子息でもあるのだが…)。
 私も高校時代にある先輩から「探偵小説でもいいから本を読みなさい。本を読むと知識が増えると共にいろんな考え方が学べるし、なにより漢字が覚えられるから」と奨められたことがある。どちらかといえば国語嫌いだったのが、それ以来本を読むようになり今日に至っている。お蔭で少なくとも漢字の持つ意味を考えることができるようにはなった、と思っている。
 また今考えると、小学生時代に少しの間通った算盤塾での経験が、数の概念の理解に役立っているようだ。
 姉歯問題やホリエモン事件といったモラルの崩壊が叫ばれる一方、青少年の理工系嫌いが問題視されている今日、新たな法律の作成や罰則の強化より大切な、日本社会の再生にとって真に必要な問題を提起している一冊と思う。
■ 出版社/文藝春秋
■ B5版 251 頁= 1,250円(税込)