「最近、私が読んだ本」 ・・・・・松下一郎


■こんな「歴史」に誰がした 日本史教科書を総点検する
/著者:渡部昇一・谷沢永一
■出版社/文藝春秋 文春文庫
■文庫版 294頁  580 円(税込)

 例によって買ってきたままツンドクしていた中の一冊である。本棚を片付けていて見つけ、博覧強記の論客二人が展開する問題提起の鮮やかさに引きずりこまれてしまった。両氏はわが国の中学生が学ぶ歴史教科書は、子どもたちから「日本人であることの誇り」を徹底的に奪うよう工夫されている、この反日歴史教育が日本の青年男子を無気力にしている原因の一つであると述べている。古代から現代まで具体的におかしいところを逐一、槍玉にあげて論証されているほか、この教科書が教育の場へ採択されるまでの内幕まで紹介されていて、眼から鱗が落ちる思いをさせられた。

 近ごろ後期高齢者と呼ばれるようになった吾々の世代は、戦時中を軍国少年として過ごし、敗戦で突然民主主義をあてがわれた経験を共有している。頑張って戦後の繁栄に寄与してきた世代でもあるが、自分の国を熱愛しないまでも卑下する人は少ないと思う。吾々世代の人間には、高校の卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱を拒否する教員の存在を理解し難い。彼らは、日本人としての誇りを失わせる偏向歴史教育を受け、それがDNAに刷り込まれてしまったに違いない。自分の国の歴史に誇りを持たない教員が、次世代を担う子どもたちを教育していると思うとこの国の将来が思いやられる。

 子どものころ「そんなことしたらバチがあたる」という叱られ方をしたものだが、近ごろ耳にしなくなった。また、叱って当然なときには他人の子どもでも叱るのが大人の仕事だったが、最近は迂闊にそんなことをすると噛み付いてくる親がいるという。それもこれも戦後教育の成果であると思われるが困った情景である。元来、わが国には宗教、道徳などの社会規範はかなり希薄なため、尚更、自分の生まれ育った国に誇りと愛情を持ち続ける次世代を育てる教育が必要なことを再認識させられた。