自著によせて・・・・岩瀬文夫

■住宅現場手帖−ひび割れのないコンクリート基礎のつくりかた−/岩瀬文夫 著
 「コンクリートは生き物」。このことを確信した時、永年にわたって私の頭の中にもやもやしていた、コンクリートに関する最大の難問−ひび割れ−を解消するための糸口を見いだせた。
 コンクリートは、セメント、水、骨材等の材料を練り混ぜて造るが、これらのうちセメントが水と反応して、長い年月を要しながら徐々に硬化体へと変化していく。それはまさしく「成長している」ということであり、植物や動物と同じような生き物としての性質を有することが分かる。生き物であれば、その成長の過程において環境の影響を強く受ける。この点、まさにコンクリートも同様である。その成長する過程において与えられた諸条件によって、完成時の出来が異なるものになる。したがって、完成時の出来の善し悪しは、それに関わる「人」の手に委ねられているとも言える。つまり、社会の人々が求める、丈夫で長持ちするコンクリートは、これらのことを正しく認識した人たちが関わってこそ、実現するのである。
 最近、コンクリートに生じるひび割れ等、不具合についての相談が多く寄せられる。その原因をたどっていくと、ほとんどの不具合が、工事に関わる人々のコンクリートに対する誤解に起因して生じていることが分かる。要は、コンクリートに関する正しい知識を持ち、理解して、適正に対応することで、それらの問題を解消できるのである。その解消策の要点は、私なりに整理した「密度の高いコンクリートを造ること」にある。
 現在、その内容を「ひび割れのないコンクリートの造り方」として、毎月開催している技術講習会においてご紹介しているが、その一部を「ひび割れのないコンクリートのつくり方」と「住宅現場手帖−ひび割れのないコンクリート基礎のつくりかた−」という2冊にまとめた。
 前者は、ひび割れの発生要因やひび割れの防止策並びに補修法等を記述したもので、後者は手帖という名の通り、コンパクトにまとめて、工事担当者が現場において利用しやすいように、要点を整理したものである。「ひび割れのない、丈夫で長持ちするコンクリート構造物」を実現すれための一助となるよう、ご活用頂ければと思う。
■出版社/日経BP社
■B6判192 頁= 1,700 円+税