「自著によせて」・・・・ 福本雅嗣


■ 木造住宅現場管理大系-施工手順と確認事項-/著者:福本雅嗣

■ 出版社/日経BP社

■ A4変形判 591頁+「木造住宅 現場管理大系 チェックシート」(CD-ROM)= 18,000 円(税込)

 現在の木造軸組工法は、戦後1950(昭和25)年の建築基準法の制定によって、それまでの伝統的工法とは別の工法として誕生したといわれる。しかし、いま振り返ってみると、現在の工法への道筋を最も端的に示したのは、建築基準法より、むしろ同じ年に(1950年)にスタートした住宅金融公庫の木造住宅工事共通仕様書であったと言っても過言ではあるまい。持ち家政策を推進してゆくための仕組みとしての金融施策に支えられて建設された住宅のほとんどが、“公庫仕様”と呼ばれる木造住宅工事共通仕様書を、技術基準として受け入れるようになっていったのである。

 本書は、現在最も普及していると考えられる住宅金融公庫木造住宅工事共通仕様書をベースとした木造軸組工法による2階建て住宅の範囲に絞り、敷地調査の段階から完成引き渡しまでのほぼ全工程について、一般的に使われている施工法をその工程ごとに区切り、施工手順と確認すべき項目を工事を管理する立場でわかりやすいようにまとめたものである。もとより施工手順や仕様は各社各様であり、今日行われているそれぞれの施工法を網羅することはとてもできないが、1棟の木造住宅建築を完成させるために必要な項目は、ほぼすべて記述したつもりである。

 木造軸組工法による住宅建設の流れを細かく分類することで、各工法をあるレベルまで特化させて詳細に解説するとともに、全体像を把握しやすくしようと試みた。その試みがどこまで実現できたかいささか心もとない部分もあるが、少なくとも21世紀初頭のわが国の一般的な住宅がどのように造られていたかを後世に示す記録にはなったのではないかと思う。木造住宅の品質管理のための実用手引き書として、あるいは各社における現場管理の自主基準作成の参考として、それぞれの立場でさまざまな活用法を考えていただけると幸いである。